2008-05-13

寅次郎

以前、信号機についてちょっと考えたことがありました。車に乗って信号待ちをしているとき、何の気なしに歩行者用の信号機を見上げるとどうにも切なくなることがあって、なんだろうなあと不思議に思っていたんです。

考えていくうちに、これは信号機を見上げる角度に原因があるのではないかと思いついて、運転席 (普通のワゴンです) に座っている時の自分の目の高さを考えてみるとおよそ 120 〜 130cm 。調べてみるとこれはだいたい小学 2 〜 4 年生の平均身長なんです。つまり、この切なさというのは自分が小学生の頃に見上げた歩行者用信号を起因とするフラッシュバックで、そんな過去の風景のノスタルジーなのではないかと。

以降、それを風街ろまんならぬ『信号待ちろまん』と名付けて、夕暮れ時の信号待ちの際など「おお。切ない。信号待ちろまん」などとひとりごちているのです。

しかしながら「なるほど。となると君はアレですか。信号待ちのたびにフラッシュバック&ノスタルジックですか。ほほう、それはなかなかオツなもんでげすな。精神衛生にもたいそう良さげ。おほほほほ」というわけにはなかなかいかないもんで、やっぱり赤信号ってのはどうしてもイライラしがちです。できれば全ての信号が私のために青信号になれば良いのに!パンがなければケーキを食べれば良いじゃない!とか思ったりします。やんぬるかなやんぬるかな。

でも、そんな私にもたったひとつだけ、とある場所にぜひとも止まりたい交差点があるんです。というか、むしろ能動的にアクセル調整及びブレーキングなどをほどこし、無理やり止まったりするくらいに。

その交差点はたまーに通る道で、なんの変哲もない田舎道なんですが、かどに一軒の家と一軒の犬小屋がありまして、その犬小屋の主は『寅次郎』といいます。彼を見たいがために私は赤信号を望んでいるのです。

どうやら彼は身だしなみには無頓着なほうらしく、白いちぢれ毛はいつも黒く汚れていて、それでもなんというか素敵に泰然としております。道路を走る車にも特段の感慨はないようです。いや、もしかしたら近年の HONDA 車の動向には並々ならぬ興味をお持ちなのかもしれませんが、地味な TOYOTA 車に乗っている私にとっては計り知ることのできないところであります。

もう 5 年くらいのお付き合いになるでしょうか。見るたびに「ああ、いるなあ」とか「あ、今日はおうちの中ですか。そうですか」など、まあ水のように淡いお付き合いですが、ともあれお元気でいてもらいたいものだと願っております。その限り、私は右足の微妙なコントロールを駆使してお付き合いを続けていく次第です。

0 件のコメント: